
一人の男がふとっちょの従者をしたがえ牢獄(=地獄)に降りてくる。教会を侮辱したかどで逮捕されたこの男、ミゲル・ド・セルバンテス、自称詩人だという。
のっぽとふとっちょのこの凸凹コンビ、牢獄で袋だたきになりそうになるが、獄舎の親方の意見で裁判がはじまる。
なに詩人だ?役にも立たない、ありもしない空想ばかりのろくでなしのくせに、との論告に対し、いや待て、有罪にする前に私の話を聞いてくれ。そうだ芝居だ!衣装もある。
舞台は旅籠だ、親方あんたは旅籠の親爺、それからそこのお嬢さん、貴女はアルドンサ、旅籠の料理女だ。従者よ、おまえはサンチョ・パンサ。
私は田舎の郷士アロンソ・キハーナ、またの名、なにをかくそう「憂い顔の騎士」ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャだ!
地獄・裁判・芝居の親縁性。
ボクは松本幸四郎さんの芝居が大好きで、機会があるたび幸四郎さんの歌舞伎を見続けている。なかでも
『籠釣瓶』の佐野次郎左衛門と大星由良之助が大好き。
ところが幸四郎さんのミュージカルを観たことがない。うちのヨメが先日『アマデウス』を観に行ってずいぶん感激していたが、ミュージカルと芝居はねえ、だなんて。
しかしながら幸四郎さんは若いとき、1960年代半ばだったか、ブロードウェーに武者修行に行って主演を勝ち得ていたのだね。『ラ・マンチャの男』もその一つ。
そのまま歌舞伎界の御曹司でもいられたのに、ミュージカルで勝負に打って出るなんてそれだけでも凄すぎるが、芝居をジャンル分けせずに取り組む姿勢にずいぶん共感した。
『サウンド・オブ・ミュージック』にしろ『ジーザス・クライスト・スーパースター』にしろ、もともとミュージカルは大好きなのに、舞台で観たことがない。映画ばかり。
さて『ラ・マンチャの男』、はじまりは牢獄へ降りる階段が上から下りてくるところから始まるのだろうか?舞台演出が楽しみ。
アルドンサ役はソフィア・ローレンのイメージがこびりついてしまっているけれど、松たか子さんがどういう演技を見せてくれるだろうか?
きっとあのリズムと歌詞が聞こえてきただけで、ボクはきっと泣き出してしまうだろう。ただでさえ高麗屋の声・口跡を観客席で聞いただけで涙を抑えられないのだから。
この連休、予習に次ぐ予習ばかりだ。メロディー(オリジナル・キャスト版とNew Broadway cast版)をiPhoneに入れ、台本を携え、頭で舞台を思い描き、いやもう感極まってしょうがねえなあ。(T_T)
"To dream the impossible dream,
To fight the unbeatable foe,
To bear with unbearable sorrow,
To run where the brave dare not go...
"To run where the brave dare not to go,
Though the goal be forever too far,
To try, though you're wayworn and weary,
To reach the unreachable star...
"To reach the unreachable star,
Though you know it's impossibly high,
To live with your heart striving upward
To a far, unattainable sky!"
【追 記】
あとで幸四郎さんの御著書『弁慶のカーテンコール』(光文社、2006年)で確認したら、幸四郎さんの『ラ・マンチャの男』ブロードウェー初演は1969年、なんと26才(市川染五郎当時)のときだった。
【追記2】
こういう「劇中劇」の趣向の元ネタはやはり『ハムレット』なのだろうか?
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